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赤字・負債がある老人ホーム・介護施設の売却と事業承継
老人ホーム・介護施設の売却・事業承継のご相談を承ります。赤字・債務超過・後継者不在の状況でも、選択肢を一緒に整理し、状況に合った専門家や公的な相談窓口をご案内します。
老人ホーム・介護施設の引き継ぎで評価されうる価値
入居者・介護職員・施設と指定が、評価の中心になります。人材難や借入負担が重い場合は、介護事業を広く運営する事業者のグループに入る選択肢も考えられます。
決算書の数字だけで決まるわけではありません
売却や引き継ぎの可能性は、直近の業績や財務内容だけで決まるものではありません。老人ホーム・介護施設で培った営業基盤・人材・許認可・取引先との信頼は、買い手にとって一から作れない価値として評価されることがあります。一方で、負債・滞納・保証の状況によって取れる方法は変わります。廃業してしまう前に、引き継ぐ選択肢があるかどうかを専門家と確認してみてください。
老人ホーム・介護施設の売却・承継で論点になること
老人ホーム・介護施設は、入居者と職員、そして介護保険の指定や有料老人ホームの届出がそろって成り立つ事業で、赤字でも入居者の生活を守るために運営を続けられる形での引き継ぎが検討されることがあります。論点は、株式譲渡か事業譲渡かで指定の手続きが大きく変わること、介護報酬の返還リスク、入居一時金の返還債務、建物の老朽化と借入です。2026年6月公布の法改正で有料老人ホームの一部に登録制が導入される予定であることも、確認すべき点です。
老人ホーム・介護施設の売却・承継で見られるポイント
赤字・負債があっても評価されうる点
- 入居者が生活している居室と、入居者・家族との信頼関係。
- 介護職員・看護職員・ケアマネジャーなど、人員基準を満たす職員の体制。人材の確保が難しい中、職員が定着していること自体が評価されることがあります。
- 介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)やグループホームの指定。都道府県・市町村の計画で定員の総量が管理され、新たな指定がされない場合もあるため、既存の指定と定員が評価されることがあります。
- 自社で保有する土地・建物や、長期の賃貸借契約で確保している施設。
- 協力医療機関や地域の居宅介護支援事業所との連携。
買い手・専門家が確認することが多い点
- 人員配置や加算の要件を満たしていたかの記録。要件を満たさない請求が見つかると返還を求められることがあり、不正な請求とされた場合は返還額に加えてその40%に相当する額を徴収されることがあります(介護保険法第22条第3項)。
- 過去の運営指導・監査での指摘事項や行政処分の有無、苦情・事故の記録。
- 入居一時金(前払金)の返還債務と、法律で求められる保全措置の状況(老人福祉法第29条)。
- 建物の耐震性と修繕計画。既存耐震不適格の大規模な老人ホーム等(2階以上かつ床面積5,000㎡以上)は耐震診断が義務付けられ、結果が公表されています。
- 国や自治体の補助金で整備した建物・設備の有無。譲渡などの際に財産処分の手続きや補助金の返還(国庫納付)が必要になる場合があります。
- 感染症・災害の業務継続計画(BCP)や虐待防止の措置の整備状況。未整備の場合は介護報酬が減算される仕組みがあります。
主な許認可と、引き継ぎ方による違い
会社ごと引き継ぐ「株式譲渡」と、事業だけを引き継ぐ「事業譲渡」では、許認可の扱いが異なることがあります。 要件や手続きは個別の事情・自治体の運用で変わるため、実際には所管の行政庁や行政書士などの専門家に事前確認が必要です。
| 許認可 | 株式譲渡(会社ごと)の場合 | 事業譲渡の場合 |
|---|---|---|
| 介護保険の事業者指定(特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護など)介護保険法第70条・第75条・第78条の2 | 指定を受けている法人は変わらないため、指定は続きます。代表者などの変更は10日以内に届け出ます。指定は6年ごとの更新制です。 | 指定は事業者ごとに行われるため、譲り受けた法人が新たに指定を受け、譲り渡す側は廃止の1か月前までに届け出るのが基本です。介護付き有料老人ホームやグループホームは定員の総量規制の対象になり得るため、新規指定の見通しを指定権者(都道府県・市町村)に事前に確認することが欠かせません。合併・会社分割でも承継先の事業所として新規指定が必要とされていますが、職員に変更がないなど実質的に継続して運営されると指定権者が認める場合は、書類の簡素化や加算の実績の通算などの柔軟な扱いが国から示されています(介護保険最新情報Vol.862)。実際の扱いは自治体ごとに異なります。 |
| 有料老人ホームの設置届老人福祉法第29条 | 設置者(法人)は変わらないため、届出はそのまま有効です。届出事項に変更があれば、変更の日から1か月以内に都道府県知事に届け出ます。 | 法律上、設置者の地位を承継する規定はなく、譲り受けた側による新たな設置届と、譲り渡す側の廃止届(廃止の1か月前まで)などが必要になるのが一般的です。具体的な手順は都道府県によって異なるため、事前確認が必要です。2026年6月に公布された改正法により、政令で定める要介護状態の方を入居させて介護等を提供する有料老人ホームは、公布から2年以内の政令で定める日から、都道府県知事の登録制(5年ごとの更新)に移る予定です。引き継ぎの時期によっては、新しい制度への対応も確認が必要です。 |
| サービス付き高齢者向け住宅の登録高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条・第11条 | 登録事業者(法人)は変わらないため、登録は続きます。 | 登録事業を譲り受けた者は登録事業者の地位を承継し、承継の日から30日以内に都道府県知事等に届け出ます。相続・合併・会社分割でも地位を承継でき、同様に30日以内の届出が必要です。登録は5年ごとの更新制です。 |
| 社会福祉法人の施設(特別養護老人ホームなど)の合併・事業譲渡社会福祉法第48条〜第50条 | 社会福祉法人には株式(持分)がないため、株式譲渡という方法はとれません。 | 事業譲渡では、定款変更の認可や基本財産処分の承認など所轄庁の手続きが必要になり、譲り受ける側は介護保険の指定などを新たに受けます。合併と違い権利義務がまとめて移らないため、入居者・職員・委託先・土地建物などは改めて契約が必要です。社会福祉法人同士の吸収合併は、所轄庁の認可を受けなければ効力を生じません(社会福祉法第50条第3項)。寄附で取得した財産や国庫補助で整備した財産は、税の扱いや補助金の返還に注意が必要とされています。厚生労働省が「合併・事業譲渡等マニュアル」を公表しています。 |
赤字・負債がある老人ホーム・介護施設で気をつけたいこと
介護報酬は国が定める公定価格で、人件費や物価が上がっても、報酬改定までは収入を増やしにくい構造です。厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査では、2024年度決算で介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の44.3%が赤字でした。2026年度には介護職員等の処遇改善を中心とした期中改定(改定率+2.03%)が行われ、2027年度に次の改定が予定されています。
有料老人ホームは、2026年6月公布の法改正で一部に登録制が導入されるなど、制度の見直しが進んでいます。引き継ぎでは、入居一時金の返還債務と保全措置、人員体制、建物の修繕計画を含めて、今後の制度に対応できるかが確認されることが多いです。
株式譲渡は指定や契約をそのまま引き継げる一方、過去の介護報酬の返還リスクや未払いの残業代なども会社に残ります。事業譲渡は引き継ぐ範囲を選べる一方、指定の取り直しや入居契約・雇用契約の切り替えが必要です。どちらが適するかは自治体の運用によっても変わるため、指定権者への事前相談と専門家の確認が大切です。
老人ホーム・介護施設の売却・承継でよくある質問
Q. 赤字の施設を引き継いでもらう場合、入居者の契約はどうなりますか?
A. 株式譲渡では運営法人が変わらないため、入居契約や介護保険の指定はそのまま続きます。合併の場合は権利義務がまとめて承継されるため、利用契約の再締結を不要とする扱いが国から示されています。事業譲渡の場合は契約が自動的には移らないため、入居者一人ひとりとの契約の切り替えや説明が必要になります。いずれの場合も、入居者と家族への丁寧な説明と、指定権者への事前相談が欠かせません。
Q. 特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人でも、事業を引き継いでもらえますか?
A. 社会福祉法人には株式がないため、他の社会福祉法人との合併や、施設の事業譲渡という形になります。合併には所轄庁の認可が、事業譲渡には定款変更の認可などが必要です。法人の財産を不当に法人の外へ流出させないことが求められるため、譲渡価格は適正な評価に基づいて決める必要があります。厚生労働省の「合併・事業譲渡等マニュアル」を参考に、所轄庁へ早めに相談してください。
Q. 入居一時金を受け取っている施設は、引き継ぎで何に注意すればよいですか?
A. 有料老人ホームが前払金を受け取る場合、その算定の根拠を書面で示し、返還に備えた保全措置を講じることが法律で求められています。入居から一定期間内に契約が終了した場合の返還のルールもあるため、未償却の前払金がどれだけあるかが引き継ぎの評価に影響します。事業譲渡では、この返還債務をどちらが負うかを契約で明確にする必要があります。保全措置の状況は、引き継ぐ側や金融機関から確認されることが多い項目です。
参考にした公的な情報
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「介護保険法(第22条・第70条・第70条の2・第75条・第78条の2)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「老人福祉法(第29条 有料老人ホーム)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000133
- 厚生労働省老健局(WAM NET掲載)「介護保険最新情報Vol.862「事業所の吸収分割等に伴う事務の簡素化について」」 https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2020/0804173253857/ksvol.862.pdf
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1518「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について」」 https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
- 厚生労働省(内閣府 規制改革推進会議 ワーキング・グループ資料)「介護・障害福祉分野におけるサービス事業者の合併、事業譲渡等」 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_04medical/240426_01/medical02_1.pdf
- 厚生労働省「合併・事業譲渡(社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン・合併・事業譲渡等マニュアル)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_60925.html
- 厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/153-1/r07_chousa_kekka.pdf
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001647819.pdf
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001195261.pdf
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「高齢者の居住の安定確保に関する法律(第5条・第11条)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000026
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「社会福祉法(第48条〜第50条 合併)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000045
- 国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律の概要」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001466564.pdf
情報の確認日: 2026年9月24日
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