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後継者不在・事業承継・廃業

会社をたたむお金がないときの選択肢|廃業・破産・売却・再生

「もう続けられない。でも、たたむためのお金もない」。行き詰まったように見えても、取れる手はいくつかあります。手遅れになる前に、道筋を整理しておきましょう。

先に結論

会社の財産で債務をすべて払えるなら通常の解散・清算ができますが、払いきれない(債務超過の)場合は特別清算や破産といった裁判所の手続きが必要になり、弁護士の判断が欠かせません。費用が心配でも、中小企業活性化協議会の再チャレンジ支援など無料の公的窓口で相談でき、事業譲渡で事業の一部を残す方法や、経営者保証ガイドラインで個人の保証債務を整理する方法も検討できます。

この記事のポイント

まず財産と債務を比べる会社の財産で債務を払いきれるかどうかで、取れる手続きが変わります。
払いきれないなら裁判所の手続き特別清算や破産が必要になり、申立て前に弁護士の判断が欠かせません。
相談は無料の公的窓口から中小企業活性化協議会の再チャレンジ支援では、弁護士等の専門家が無料で助言します。
保証と事業は分けて考える保証債務はガイドラインで整理できる可能性があり、事業は譲渡で残せる場合もあります。

まず確かめたいのは「財産で債務を払いきれるか」

会社をたたむ方法は、会社の財産で借入や未払金などの債務をすべて払いきれるかどうかで大きく分かれます。払いきれるなら、株主総会で解散を決め、会社自身が清算する「通常清算」ができます。払いきれない場合は、裁判所が関わる手続きに進むことになります。

会社法は、清算中の会社の財産が債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人が直ちに破産手続開始の申立てをしなければならないと定めています(第484条)。自己判断で「とりあえず解散だけ」と進めず、最初に財産と債務の全体をつかむことが大切です。

中小M&Aガイドライン(第3版)も指摘するとおり、帳簿上は債務超過でも、資産と負債を時価で見直すと実態は資産超過だったと分かるケースがあります。帳簿の数字だけで判断せず、専門家と一緒に確かめましょう。

通常の解散・清算の流れと費用

費用としては、登記の登録免許税、官報への公告の掲載料、税務申告、司法書士や税理士などへの報酬がかかります。通常清算は会社の財産を換金して債務の弁済に充てていく手続きなので、手元の現金が少なくても、換金できる資産があれば費用のめどが立つ場合もあります。

財産で債務を払いきれる場合の、通常清算のおおまかな流れは次のとおりです。債権者への公告と催告では、債権を申し出る期間を2か月以上とる必要があります(会社法第499条)。

  1. 1株主総会で解散を決議し、清算人を決める
  2. 2解散と清算人の登記をする
  3. 3官報で公告し、把握している債権者には個別に催告する
  4. 4財産を換金し、債務を弁済する
  5. 5残った財産を株主に分配し、清算結了の登記をする

払いきれないなら:特別清算と破産

清算中の会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は裁判所に特別清算開始の申立てをしなければなりません(会社法第511条)。特別清算は裁判所の監督のもとで進める清算手続きで、債権者集会で可決された協定に基づいて弁済する方法(協定型)のほか、債権者が少ない場合などには裁判所の許可を得て債権者全員と個別に和解する方法(和解型)がとられることも少なくありません(東京地方裁判所)。いずれも債権者の理解と同意が前提になります。

破産は、裁判所が選んだ破産管財人が会社の財産を換金し、法律の定める順位に従って債権者に配当する手続きです。申立てには、官報公告費用などの予納金を含む費用が必要になります。

どちらの手続きが適しているかの判断には専門的な知識が必要で、東京地方裁判所も、特別清算の申立て前の相談は弁護士にするよう案内しています。同裁判所の案内では、法人の破産は原則として破産管財人が選ばれる「管財事件」として扱われ、特別清算でも事案によっては負債総額に応じた破産予納金相当額が必要になる場合があるとされています。

財産で債務を払いきれる

  • 株主総会の決議で解散し、会社自身が清算する(通常清算)
  • 費用は登記・公告・税務申告・専門家報酬など
  • 残った財産は株主に分配される

払いきれない(債務超過)

  • 特別清算(債権者の同意が前提)か破産になる
  • 予納金など裁判所の手続き費用がかかる
  • 申立て前に弁護士の判断が必要

弁護士に頼むお金がないときの相談先

会社(法人)の手続きには、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談や弁護士費用の立替制度は使えません。法テラスは、法人・組合などの団体を利用の対象に含めていないためです。経営者個人の問題については、収入や資産が一定の基準以下であることなどの条件を満たせば、利用できる場合があります。

会社の廃業や保証債務の整理については、各都道府県の中小企業活性化協議会が「再チャレンジ支援」を行っています。協議会に所属する弁護士などの専門家が現状を分析し、円滑な廃業や保証債務の整理について説明・助言をしたうえで、必要に応じて外部の弁護士を紹介します。協議会の支援は無料で、個人事業主も相談できます(紹介を受けた弁護士に依頼する場合の費用は、依頼前に確認しましょう)。

どこに相談すればよいか迷う場合は、当窓口にご連絡いただくこともできます。状況を伺ったうえで、こうした公的窓口や専門家へのご案内をしています。

個人保証があるなら:保証債務は切り分けて整理できる可能性

会社の借入に経営者が連帯保証をしている場合、会社が破産しても保証債務は残ります。ただし「経営者保証に関するガイドライン」に基づいて整理すれば、保証人が破産手続によらずに保証債務を整理できる可能性があります。

中小企業庁の説明によると、ガイドラインでは、破産した場合に手元に残せる財産(自由財産)に加えて一定期間の生活費を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられるようにすることが検討され、返しきれない保証債務の残額は原則として免除されます。債務整理を行った事実などの情報は、信用情報登録機関に報告・登録されないとされています。

生活費を残す検討は、事業再生や廃業に早く着手したことで会社からの回収見込みが増えた場合に行われるものとされています。保証債務の整理は金融機関などの債権者の理解を得ながら進めるものなので、資金が尽ききる前に、中小企業活性化協議会や弁護士に相談することが何より大切です。

売却・再生という選択肢:事業だけを残す

会社としては続けられなくても、利益の出ている一部の事業や設備、取引先を引き継いでくれる相手が見つかる可能性はあります。中小M&Aガイドラインは、債務超過の会社でも部門や店舗ごとに見ると黒字の事業を持っていることも多く、一部の事業を譲り渡せば雇用の受け皿を確保でき、残りの事業を廃業する場合は譲渡対価を廃業費用に充てられる可能性もあるとしています。

事業の受け皿は、同業の会社とは限りません。同ガイドラインは、その事業に関わってきた役員や従業員に譲り渡す選択肢もあり得るとしており、経験やノウハウがある分、引き継ぎが円滑に進みやすいとしています。事業再生の場面では、事業を別の会社(第二会社)に移して立て直し、元の会社を特別清算などで整理する方式がとられることも多いとされています。

中小企業活性化協議会も、法的整理とあわせて事業譲渡を活用し、事業や雇用を一部でも残す方法や、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に基づく私的整理で破産を避ける方法を、事案によって検討できるとしています。再建の見込みがあるなら、民事再生などの再生手続きも選択肢になります。

ただし、事業譲渡は適正な対価で行う必要があります。同ガイドラインは、対価が不当に安いと債権者から詐害行為取消権を行使されるなどのリスクがあり、少なくとも破産した場合の清算価値を相当程度上回る金額が求められるとしています。会社法にも、残る債権者を害すると知りながら事業を譲渡した場合に、譲受会社がその債務の履行を請求され得る規定があり(第23条の2)、弁護士の関与のもとで債権者に説明を尽くしながら進めることが欠かせません。

相談の順番

会社のたたみ方は財産と債務の状況で変わり、個人保証の整理や事業の残し方も同時に考える必要があります。資金がないときほど相談は後回しになりがちですが、資金が尽きてからでは、選べる手続きも手元に残せるものも少なくなっていきます。

次の順番で動くと、取れる手を残しやすくなります。税金や社会保険料の滞納がある場合は、税務署や年金事務所への相談も並行して進めましょう。

  1. 1資産(換金できるもの)と負債、個人保証の一覧を作る
  2. 2中小企業活性化協議会などの無料窓口で、方向性を相談する
  3. 3弁護士に、通常清算・特別清算・破産・事業譲渡のどれが適するか判断してもらう
  4. 4税金・社会保険料の滞納があれば、税務署や年金事務所にも相談する
  5. 5従業員への説明と手続きの時期を、専門家と決める

よくある質問

Q. 手続きをせずに、会社を放っておくとどうなりますか。

A. 手続きをしないまま放置しても、会社の借入や経営者の個人保証がなくなるわけではありません。債権者からの請求が続き、状況が悪化してから対応を迫られることにもなりかねないため、早めに専門家や公的窓口に相談することをおすすめします。

Q. 個人事業主の場合も、同じように考えればよいですか。

A. 個人事業には会社のような清算の手続きはなく、事業をやめても事業の借入は事業主個人の債務として残ります。返済が難しい場合は、任意整理や自己破産などの個人の債務整理を弁護士に相談することになり、収入や資産の条件を満たせば法テラスも利用できる場合があります。中小企業活性化協議会の再チャレンジ支援も、個人事業主の相談を受け付けています。

Q. 会社が破産を申し立てた後でも、保証の整理を相談できますか。

A. 中小企業活性化協議会は、民事再生や破産をすでに申し立てた企業そのものは支援の対象外としていますが、その企業の保証人が保証債務の整理について相談することはできるとしています。会社の手続きを担当する弁護士とも連携しながら、早めに相談しましょう。

参考にした公的な情報

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します()。

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