先に結論
ゼロゼロ融資の返済が難しいときは、まず借入先の金融機関に返済条件の変更を相談し、並行して中小企業活性化協議会などで収益改善や再生の計画を検討するのが一つの進め方です。コロナ借換保証など当時の特例の多くはすでに終わっているため、借換え・売却・廃業のいずれを考える場合も、借入と経営者保証の扱いを金融機関や専門家と確かめながら進める必要があります。
この記事のポイント
ゼロゼロ融資とはどんな制度だったか
ゼロゼロ融資は、新型コロナの影響を受けた事業者向けの「実質無利子・無担保」の融資の通称です。民間金融機関の分は、都道府県などの制度融資を活用して2020年5月1日から順次始まり、売上の減少幅などに応じて信用保証の保証料や利子が補助され(利子は当初3年間)、据置期間は最大5年、無担保で経営者保証は原則として求めないとされていました。セーフティネット保証4号・5号や危機関連保証の認定を受け、信用保証協会の保証を付けて借りる仕組みで、申込みは2021年3月31日に終了しています。
日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」でも、中小企業基盤整備機構の「特別利子補給制度」を組み合わせ、最長3年間分の利子相当額が補給されることで実質的に無利子になる仕組みがありました。公庫の案内では、特別貸付の利率自体も、一定額までの部分について当初3年間は引き下げられ、3年経過後は基準の利率に戻る設計でした。この特別利子補給制度も、2022年9月30日の申込受付分で取扱いを終えています。
申込みの時期から数えると、2026年の今では利子補給の期間はすでに終わり、据置期間も多くの場合で過ぎて、利息と元本の返済が続く段階に入っています。政府の2024年6月の要請文も、同年4月に民間のゼロゼロ融資の返済開始が最後のピークを迎えたと述べています。
借換えの特例は終わり、支援の中心は経営改善・再生へ
民間のゼロゼロ融資などからの借換えに使われた「コロナ借換保証」や、新型コロナ対応のセーフティネット保証4号は、2024年6月末の期限をもって原則として終了しました(能登半島地震の被災地を対象とした延長を除く)。政府は同年7月以降、各種の資金繰り支援をコロナ前の水準に戻し、経営改善・再生支援に重点を置くとしています。
とはいえ、借換えや条件変更の道が閉ざされたわけではありません。2024年6月の要請文は、返済期間や据置期間が到来する既存の借入の条件変更や借換えについて、申込みを断念させるような対応を取らず、事業者の実情に応じて迅速かつ柔軟に対応するよう金融機関に求めており、2025年11月の要請文でも同じ趣旨が繰り返されています。
2025年11月の要請文は、信用保証の制度として、プロパー融資(信用保証協会の保証が付かない融資)を同時に行う場合などに保証料の負担を軽くする「協調支援型特別保証」や、認定経営革新等支援機関の支援がある場合に保証料の負担を軽くする「経営力強化保証」などの活用も挙げています。どの制度が使えるかは、取引金融機関や信用保証協会に確認してください。
ただ、新しい借入で返済をつないでも、収益が戻らなければ負担は先送りになるだけです。借換えを考えるときも、次に述べる計画づくりとセットで検討することが大切です。
まず取り組みたい、返済条件の変更と計画づくり
返済が苦しくなりそうなら、延滞が始まる前に、借入先の金融機関へ相談するのが基本です。返済額の減額や返済期間の延長といった条件変更で当面の資金流出を抑え、その間に収益を立て直す計画をつくります。相談の際は、直近の決算書と試算表、今後数か月の資金繰り表、借入の一覧、売上や経費をどう立て直すかの案をそろえておくと、話が具体的に進みます。
計画づくりに不安があれば、各都道府県の中小企業活性化協議会に無料で相談できます。協議会自身が行う収益力改善の支援のほか、国が認定した専門家に計画づくりを依頼する場合に、その費用の3分の2が補助される制度もあります(詳しくは、リスケ中の選択肢を解説した関連記事で紹介しています)。
- 1資金繰り表で、いつ・いくら足りなくなるかを確かめる
- 2延滞する前に、借入先の金融機関へ返済条件の変更を相談する
- 3中小企業活性化協議会などで、改善計画づくりの支援を受ける
- 4計画の見通しに応じて、再生・売却・廃業を比べて検討する
- 5経営者保証がある場合は、保証の整理もあわせて専門家と考える
返済の見通しが立たないとき:再生と再チャレンジ
計画をつくっても返済の見通しが立たない場合は、債務の減免なども含めた再生を検討することになります。中小企業活性化協議会には、収益性のある事業はあるものの財務に問題を抱える会社を対象に、事業面・財務面の両方から改善を図る再生支援があります。民事再生や破産といった裁判所の手続きを使うべきかどうかも含め、どの道を選ぶかは弁護士と相談して判断します。
改善や再生が極めて難しい場合には、協議会の再チャレンジ支援が用意されており、保証債務に悩む経営者も対象です。借入に経営者保証が付いている場合は、「経営者保証に関するガイドライン」に基づいて、会社の整理とあわせて保証債務を整理し、一定期間の生計費や華美でない自宅などを手元に残せる可能性があります。
売却を検討するときの論点:借入と保証
ゼロゼロ融資を抱えたまま会社を売る場合、株式譲渡なら、融資は会社の借入としてそのまま残ります。買い手が返済を続けるのか、自らの資金や新たな借入で返済・借換えをするのかによって、譲渡の条件や金融機関との調整の中身が変わります。買い手が借入をそのまま引き継ぐ場合でも、金融機関から見れば取引先の株主や経営者が替わることになるため、いつ・どのように伝えるかを専門家と確認しておく必要があります。
事業譲渡の場合は、移さなかった借入が元の会社に残るため、受け取った対価を返済に充て、足りない分をどう整理するかを考える必要があります。対価が不当に低いと、残された債権者を害する行為として問題になることがあるため、進め方は専門家と一緒に設計します。
どちらの場合も、経営者保証は売却によって自動では外れません。ゼロゼロ融資でも契約によって保証の有無は異なるため、まずは手元の契約書で保証人になっているかどうかを確かめ、保証の解除や買い手側への移行を最終契約でどう定めるかを検討しておきましょう。
廃業を考える場合と、相談先の使い分け
事業を続けるのが難しく廃業を選ぶ場合でも、会社の借入は消えず、保証があれば保証人に請求が及びます。経営者保証に関するガイドラインの関連資料は、廃業の手続きに早く着手するほど保証人の手元に残せる資産が増える可能性があるとしており、会社の整理と保証の整理を一体で早めに考えることが大切です。会社全体での継続が難しくても、利益の出ている一部の事業だけを引き継いでもらえないかを検討する方法もあります(債務超過の会社の事業の引継ぎ方は関連記事で解説しています)。
相談先は目的によって使い分けると、話が早く進みます。返済条件の変更は借入先の金融機関、計画づくりや再生・再チャレンジは中小企業活性化協議会、経営全般の悩みはよろず支援拠点(各都道府県に設置、相談無料)、会社や事業の引継ぎ先探しは事業承継・引継ぎ支援センター、債務や保証の整理は弁護士が窓口になります。どこから相談すればよいか迷う場合は、当窓口がお話を伺い、相談先の整理をお手伝いします。
よくある質問
Q. 保証人になっていないゼロゼロ融資でも、社長個人が返済を求められることはありますか?
A. 会社(法人)の借入について経営者個人が返済を求められるのは、通常、保証契約を結んでいる場合です。保証人になっていなければ、会社の借入を個人が肩代わりする義務は原則としてありません。ただし個人事業主の場合は、事業の借入がそのまま事業主本人の借入になります。契約内容に不安があれば、弁護士に確認してください。
Q. 返済が遅れ始めてからでも、中小企業活性化協議会に相談できますか?
A. 協議会は、民事再生や破産をすでに申し立てた会社を対象外としていますが、それより前であれば相談できます。また、申立て後でも、その会社の保証人が保証債務の整理について相談することは可能です。延滞が長引くほど取れる手段は限られていくため、早めの相談をおすすめします。
Q. 借換えで新しく借りるとき、また経営者保証が必要になりますか?
A. 信用保証協会の保証付き融資には、信用保証料を上乗せすることで経営者保証の提供を不要とする制度があり、政府の要請文でも活用が呼びかけられています。保証を求められた場合は、経営者保証に関するガイドラインに沿って、保証が必要な理由や、どうすれば保証に頼らない融資に近づけるかを金融機関に確認できます。利用できるかどうかは、取引金融機関や信用保証協会に相談してください。
参考にした公的な情報
- 金融庁「民間金融機関において実質無利子・無担保融資を開始します」 https://www.fsa.go.jp/news/r1/ginkou/20200501-2.html
- 日本政策金融公庫「「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用による実質的な無利子化融資のご案内」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_faq_jisshitsumurishika.pdf
- 金融庁「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について(2024年6月7日)」 https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20240607/yousei.html
- 金融庁「金融の円滑化に向けた取組及び事業者支援の徹底について(2025年11月27日)」 https://www.fsa.go.jp/news/r7/ginkou/20251127/yousei.html
- 中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/index.html
- 全国銀行協会(経営者保証に関するガイドライン研究会)「経営者保証に関するガイドライン(廃業時の基本的考え方を含む)」 https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/guideline/
※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します(ご相談の仕組みと紹介の方針)。