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負債・債務超過での売却

リスケ中でも会社は売れる?返済条件の変更中に考えたい選択肢

返済を減らしてもらって一息ついたものの、この先をどうするか決めきれない——。リスケ(返済条件の変更)中の会社が取れる選択肢と、売却を考えるときの注意点を、公的な資料に沿って整理します。

先に結論

リスケ中であっても会社や事業の売却を検討することはでき、事業に価値を認める相手がいれば引継ぎが成立する可能性があります。リスケは立て直しの時間を確保する手段なので、その間に収益改善の計画、スポンサーへの引継ぎ、廃業のどれを選ぶかを、金融機関や中小企業活性化協議会などと相談しながら決めていくことが大切です。

この記事のポイント

リスケは時間を確保する手段毎月の返済が減っても借入の残高は減らず、その間に何をするかが問われます。
条件変更の相談は受け付けられている政府は、申込みを断念させるような対応をしないよう金融機関に要請し続けています。
計画づくりには公的な支援がある中小企業活性化協議会や、専門家費用の2/3を補助する計画策定支援を使えます。
売却も金融機関と一緒に考える事業再生のガイドラインは、金融機関にスポンサー探しへの協力を求めています。

リスケで変わること、変わらないこと

リスケ(リスケジュール)とは、金融機関に返済条件の変更を認めてもらうことです。元本の返済を一定期間猶予してもらう、返済期間を延ばして毎月の返済額を減らすといった形があり、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」ではこうした返済条件の緩和を「条件緩和」と呼んでいます。

毎月の資金の流出は抑えられますが、借入の残高そのものが減るわけではありません。ガイドラインは、自助努力を尽くしてもなお元本の返済が難しい場合に条件緩和を求め、条件緩和を受けたら苦境に陥った原因を明らかにし、事業再生計画をつくって収益力の回復に努める、という順序を示しています。リスケで生まれた時間をどう使うかが、その後の選択肢を左右します。

金融機関は条件変更の相談にどう向き合っているか

政府は金融庁などを通じて、既存の借入の条件変更や借換えの申込みを断念させるような対応を取らず、事業者に寄り添って迅速かつ柔軟に対応するよう、金融機関に繰り返し要請しています(直近では2026年3月)。2025年3月の要請文では、官民の金融機関が条件変更などの申込みを受けた場合の、これまでの応諾率が99.2%と示されています。

2023年3月の要請では、すでに元金の返済を始めている事業者や、2度目・3度目の条件変更を相談する事業者も含めて、申込みを断念させる対応をしないよう求めていました。一度リスケをしたからといって、相談の道が閉ざされるわけではありません。ただし、個別の可否や条件は、それぞれの金融機関が判断します。

事業再生のガイドラインも、条件緩和によって事業再生の可能性があり、必要性と合理性が認められる場合には、金融機関は誠実に検討するとしています。そのためにも、資金繰りの見通しと改善策を、数字で説明できるように準備しておくことが大切です。

2026年3月の要請文は、金利の見直しを協議する際に、金融機関が十分に説明することに加えて、必要に応じて個別の実情を踏まえた返済計画のアドバイスを行うことも求めています。金利の上昇で返済負担が増えそうなときも、早めに金融機関と見通しを話し合っておくことが大切です。

リスケ中に並行して進めたいこと

リスケの期間は、次の打ち手を準備するための時間です。会社の状況によって優先順位は変わりますが、一般的には次のような作業を並行して進めます。

改善策を数字に落とした経営改善計画は、金融機関との対話の土台になります。自社だけでつくるのが難しければ、次に紹介する公的な支援を使って専門家の力を借りることができます。

ガイドラインは、苦境にある会社に対し、信頼性の高い経営情報を金融機関へ正確かつ丁寧に開示・説明することを求めており、公認会計士や税理士の検証を経た開示が望ましいとしています。計画や業績の見通しに大きな変化があったときは、平時以上に自分から金融機関に報告することも求められています。

  • 月ごと(できれば日ごと)の資金繰り表をつくり、見通しを金融機関と共有する
  • 赤字の原因を、部門・店舗・取引先・商品ごとに分けて確かめる
  • 事業に使っていない資産の売却や、固定費の見直しを検討する
  • 専門家と経営改善計画をつくり、進み具合を定期的に報告する
  • 借入・保証・担保・未払いを一覧にして、全体像を把握する

中小企業活性化協議会などの公的な支援

中小企業活性化協議会は、国がすべての都道府県に設置し、商工会議所などが運営する公的機関です。弁護士・公認会計士・税理士などの専門家や地元の金融機関と協力しながら、経営者に伴走して支援するとしています。相談は無料で秘密は守られ、事前予約制です(民事再生や破産を申し立てた後の会社は対象外ですが、その保証人が保証債務の整理を相談することはできます)。

収益力の低下や借入の増加が心配な段階では「収益力改善支援」として、改善のアクションプランと簡単な収支・資金繰り計画づくりを支援しています。収益性のある事業はあるものの財務に問題を抱える会社には、事業面と財務面の改善を図る「再生支援」があり、改善や再生が極めて難しい場合には「再チャレンジ支援」も用意されています。

民間の専門家を使う方法もあります。国が認定した専門家の支援で計画をつくる場合、早期経営改善計画策定支援や、金融支援を伴う本格的な計画を対象とする経営改善計画策定支援(いわゆる405事業)で、専門家に支払う費用の2/3が補助されます。どちらが合うかは、協議会や取引金融機関に相談できます。

「売る」という選択肢の位置づけ

事業再生のガイドラインは、苦境にある会社の対応を段階的に整理しています。条件緩和を受けても収益力の回復が難しい場合は債務の減免などの抜本的な金融支援を、それでも再生が難しい場合はスポンサーの支援や経営の共同化を検討し、赤字が続いて資金の流出を止められないときは、スポンサーへの事業譲渡なども検討したうえで廃業を考える、という流れです。

ただし、この順番どおりに進める必要はありません。ガイドラインは、経営者の年齢や健康状態なども踏まえ、早い段階でスポンサーへの引継ぎや廃業を決断することで、経営者自身の生活や従業員の雇用への影響が軽くなる場合には、そうした早期の判断も排除されないとしています。

同じガイドラインは平時の心構えとして、経営者の高齢化や健康状態の変化などで円滑な事業承継に不安が出てきたら、金融機関や専門家に早めに相談し、スポンサーへの事業譲渡なども含めて助言を得ることが重要だとしています。あわせて、経営者保証が事業承継やスポンサーへの事業譲渡を進めるうえでのリスクになり得ることを認識し、その扱いに手を打っておくことも挙げています。

金融機関の側にも、スポンサー支援を求める申出を受けた場合には適切なスポンサー探しに協力し、廃業の申出を受けた場合にもスポンサーへの事業譲渡による事業継続の可能性を検討することが求められています。リスケ中の売却は、金融機関に隠して進めるものではなく、金融機関と一緒に考えていくものだといえます。

売却を進めるときの注意点

リスケ中の会社の売却では、株式譲渡なら買い手が借入を引き継いで返済を続けるのか借り換えるのか、事業譲渡なら受け取った対価で元の会社の借入をどう返し、残りをどう整理するのかを、あらかじめ金融機関と調整する必要があります。中小M&Aガイドラインも、借入や担保がある場合には、担保の解除などについて取引金融機関との事前の調整が必要になることがあると指摘しています。

また同じガイドラインによれば、希望する相手とのマッチングには、通常数か月から1年程度かかる見込みです。猶予期間の終わりが近づいてから動き出すと時間が足りなくなるおそれがあるため、リスケの期間のうちに、自力での再建と売却の両方の可能性を並行して探っておくのが現実的です。

一方で、M&Aでは秘密保持が重要で、金融機関への事前相談には、成立しなかった場合の情報の扱いといった留意点もあります。いつ、誰に、どこまで伝えるかは弁護士などの専門家と相談して決め、経営者保証の扱いや、債権者を害さない譲渡の進め方も、あわせて確認しておきましょう(それぞれ関連記事で解説しています)。

よくある質問

Q. リスケ中の会社を引き継ぐのは、どんな相手ですか?

A. 同業者や取引先、資金や経営のノウハウを持つスポンサーなどが考えられます。中小M&Aガイドラインは、譲り受ける側が売り手の数倍程度の規模の、大企業とは限らない企業であるケースも相当の割合であるとしています。相手にとっても大きな決断であることを踏まえ、誠実に情報を開示する姿勢が求められます。

Q. リスケ中であることは、相手に伝えなければいけませんか?

A. M&Aの過程では、相手による調査(デュー・ディリジェンス)で借入や返済条件も確認されるため、伏せたまま進めることは現実的ではありません。むしろ、リスケに至った理由と改善の取組みを早めに説明できるほうが、信頼関係を築きやすいと考えられます。契約で事実関係を保証する表明保証の範囲にも関わるため、開示の仕方は専門家と相談してください。

Q. 会社全体ではなく、一部の事業だけを売ることはできますか?

A. 可能性はあります。中小M&Aガイドラインは、会社全体では利益が出ていなくても、部門や店舗ごとに見ると黒字の事業があることも多く、その事業だけを譲り渡すことで従業員の雇用の受け皿を確保し、対価を廃業の費用に充てられる可能性もあるとしています。その事業に関わってきた役員や従業員に引き継ぐという選択肢もありますが、対価の妥当性や元の会社に残る借入の整理について、金融機関の理解を得ながら進めることが前提です。

参考にした公的な情報

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します()。

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