先に結論
最初に確認したいのは「いつ・いくら足りなくなるか」です。そのうえで、税金・社会保険料の猶予制度、借入先の金融機関や日本政策金融公庫・信用保証協会への返済の相談、中小企業活性化協議会の支援など、資金ショートの前に使える手当てを検討できます。売却も視野に入れるなら、決算書などの基本書類を早めにそろえておくと相談が進めやすくなります。
この記事のポイント
まず「いつ・いくら足りなくなるか」を確かめる
資金繰りが苦しいときほど、目の前の支払いに追われて全体が見えにくくなります。まずは預金残高と、今後3か月ほどの入金と支払いの予定(売上の入金、仕入れ、給与、家賃、借入の返済、税金など)を並べ、資金が足りなくなる時期と金額を書き出してください。これが、金融機関や公的窓口に相談するときの出発点になります。
資金繰り表は、厳密でなくてもかまいません。売掛金は取引先ごとの入金予定日で並べ、支払いは給与や家賃のように金額が決まっているものと、仕入れのように変動するものとを分けて書くと、どの月に資金が足りなくなるかが見えやすくなります。
次のような状態に心当たりがあれば、資金ショートが近づいているサインかもしれません。複数当てはまるなら、この記事の順番で早めに相談先へ連絡しましょう。
- 支払いのための借入や、支払いの先送りが続いている
- 税金や社会保険料の納付が遅れ始めた
- 返済条件の変更(リスケ)を受けている、または検討している
- 主要な取引先が減るなどして、売上が急に落ちた
- 給与や役員報酬の支払いを遅らせている
- 3か月先の資金繰りの見通しが立たない
税金・社会保険料は、滞納する前に猶予を相談する
国税を納期限までに納めないと延滞税がかかり、督促を受けても納めなければ、財産の差押えなどの滞納処分を受けることがあります。一方で国税庁は、一時に納付することが難しい事情がある場合、税務署に申請することで、差押えや財産の換価(売却)などの猶予が認められる場合があると案内しています。
代表的なのが「換価の猶予」です。国税を一度に納めると事業の継続や生活の維持が難しくなるおそれがあり、納税について誠実な意思があると認められることなどを要件に、納期限から6か月以内に申請します。認められると、原則1年以内の猶予期間中に分割して納付し、その間の延滞税が軽減されます。
申請書には、猶予を受けたい金額に応じて財産収支状況書や財産目録などを添えて、所轄の税務署に提出します。猶予を受ける金額が100万円以下の場合や、期間が3か月以内の場合などは、担保の提供は不要とされています。災害や病気、事業の休廃業などで一時に納付できない場合には「納税の猶予」もあります。
厚生年金保険料などの社会保険料にも、同じような仕組みがあります。日本年金機構によると、保険料を一時に納付すると事業の継続などが難しくなるおそれがあり、納付について誠実な意思がある場合、納期限から6か月以内の申請で換価の猶予を受けられ、猶予期間内の分割納付と延滞金の一部免除が認められます。窓口は管轄の年金事務所です。住民税や事業税などの地方税は、課税している都道府県・市区町村に相談します。
換価の猶予のように申請の期限がある制度もあるため、納められないと分かった時点で、早めに窓口へ連絡することが大切です。猶予が認められた後も、分割納付の計画どおりに納めないと猶予が取り消されることがあるため、無理のない計画を立てましょう。
借入の返済は、借入先・日本政策金融公庫・信用保証協会に相談する
借入金の返済が苦しい場合は、滞る前に借入先に相談するのが基本です。返済額を一時的に減らす、返済期間を延ばすといった返済条件の変更(いわゆるリスケ)は、金融機関との話し合いで決まります。相談の際は、先ほどの資金繰りの見通しと、今後どう立て直すかの考えを持参すると、話が具体的になります。
日本政策金融公庫から借りている場合、現在の借入に関する問い合わせは取引のある支店が窓口です。新たな資金についての相談は、公庫の事業資金相談ダイヤルでも受け付けています。
信用保証協会の保証が付いた借入なら、保証協会も関わります。信用保証協会は、信用保証協会法にもとづき、中小企業・小規模事業者の金融の円滑化のために設立された公的機関で、47都道府県と4市にあります。保証付きの借入の返済条件を見直したいときは、まず借入先の金融機関に相談し、手続きの流れや追加の費用がかかるかどうかを確認しましょう。
なお、相談の前に会社の財産を移したり、一部の取引先や親族にだけ優先して返済したりすることは、自己判断で行わないでください。債務の整理に関わる判断は、弁護士に相談すべき領域です。
中小企業活性化協議会に相談できること
借入や資金繰りの問題を、金融機関との関係も含めて整理したいときの公的な相談先が、中小企業活性化協議会です。中小企業庁によると、すべての都道府県に設置された公的機関で、商工会議所などが運営し、弁護士・公認会計士・税理士などの専門家や地元の金融機関と協力しながら支援を行っています。相談は無料で、相談内容だけでなく相談の申込みについても秘密が守られます。相談には事前の予約が必要です。
支援の内容は状況に応じて分かれています。収益力の低下や借入の増加が心配な段階での「収益力改善支援」、事業に収益性はあるものの財務上の問題を抱える企業への「再生支援」、事業の継続が極めて難しい企業や保証債務に悩む経営者への「再チャレンジ支援」です。なお、民事再生や破産をすでに申し立てた企業は対象外ですが、その保証人が保証債務の整理について相談することはできるとされています。
計画づくりの費用を支える仕組みもあります。協議会の支援メニューには、国が認定した専門家の支援を受けて経営改善計画を策定する場合に、専門家への支払い費用の3分の2を補助する制度(早期経営改善計画策定支援など)も含まれています。
収益力の改善の段階から相談できる窓口なので、資金が尽きる直前まで待つ必要はありません。余力が残っているうちのほうが、取りうる手段は多い傾向にあります。当窓口でも、資金の状況をうかがったうえで、こうした公的な相談先をご案内することがあります。
売却も考えるなら、早めにそろえておく書類
立て直しと並行して、事業の売却や第三者への引継ぎを考える場合もあるでしょう。中小M&Aガイドラインは、支援機関に最初に相談する段階では、直近3年分の税務申告書・決算書(損益計算書・貸借対照表を含む)・勘定科目内訳明細書の写しを用意すれば十分で、会社案内など事業の概要が分かる資料もあるとよいとしています。それ以外の詳しい資料は、支援機関の指示を受けてから準備すれば足ります。
資金繰りが厳しい会社の場合は、これに加えて、直近の試算表、資金繰り表、借入・保証・リースの一覧、税金や社会保険料の未納の状況が分かる資料があると、相談先が状況を早くつかめます。ガイドラインは、自分にとってマイナスな情報や後ろめたい情報ほど先に伝える姿勢が、課題への対応策の早い検討につながるとしています。滞納や保証の問題も、最初の段階で伝えておきましょう。
書類集めは、相談先や相手が決まる前から始められます。顧問税理士がいれば、申告書や内訳書の控えの取り寄せを頼むこともできます。
- 直近3年分の税務申告書・決算書・勘定科目内訳明細書
- 直近の試算表
- 資金繰り表(今後3か月程度の入金と支払いの予定)
- 借入・経営者保証・リース・担保の一覧
- 税金・社会保険料の未納の状況が分かる資料
- 主要な取引先と契約(賃貸借・許認可など)の一覧
- 会社案内など、事業の概要が分かる資料
よくある質問
Q. 納期限から6か月を過ぎてしまった税金は、もう相談できませんか?
A. 換価の猶予の申請は、原則として納期限から6か月以内とされています。すでに期間を過ぎている場合の扱いを含め、どの手続きが使えるかは状況によって異なるため、まずは所轄の税務署(徴収担当)に連絡して相談してください。
Q. リスケ中でも、会社の売却を検討できますか?
A. 検討すること自体はできます。ただ、返済条件の変更を受けている事情や金融機関との約束の内容は、買い手や支援機関にとって重要な情報です。最初の相談の段階で伝え、金融機関との関係をどう整理するかも含めて、専門家と進め方を考えましょう。
Q. 資金繰り表を作ったことがありません。手伝ってもらえるところはありますか?
A. 顧問税理士がいれば、まず相談してみましょう。中小企業活性化協議会の収益力改善支援では、改善のための行動計画とあわせて、簡易な収支・資金繰りの計画づくりも支援の内容に含まれています。
参考にした公的な情報
- 国税庁「猶予の申請の手引」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/yuyo-tebiki/index.htm
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/kankayuyo.html
- 日本政策金融公庫「お問合せ(事業資金相談ダイヤル・お借入に関するお問合せ)」 https://www.jfc.go.jp/n/inquiry/index.html
- 全国信用保証協会連合会「もっと知りたい信用保証」 https://www.zenshinhoren.or.jp/guarantee-system/
- 中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/index.html
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します(ご相談の仕組みと紹介の方針)。