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後継者不在・事業承継・廃業

事業承継の準備を「まだ元気なうち」に始めたい理由|時間・選択肢・地域への影響

「まだ元気だし、承継はもう少し先でいい」。そう感じている今こそ、選択肢を多く残したまま準備を始められる時期かもしれません。

先に結論

事業承継は後継者の育成や株式・資金・個人保証の整理に時間がかかり、第三者への引き継ぎでも相手探しだけで数か月〜1年程度かかることが見込まれます。判断が遅れるほど選択肢は狭まる傾向にあり、資金繰りや体調が悪化してからでは廃業の費用すら用意しにくくなることもあるため、余力のあるうちに現状の把握から始めることが勧められています。

この記事のポイント

承継には年単位の準備が要る後継者の育成、株式や資金、個人保証の整理はどれも時間がかかります。
遅れるほど選択肢は狭まる資金繰りや体調が悪化してからでは、選べる相手も方法も限られがちです。
会社を残すことは地域を残すこと雇用や取引のつながりは、一度途切れると取り戻すのが難しいものです。
最初の一歩は現状の把握強み・資金繰り・借入と保証・株主を書き出すことから始められます。

経営者の年齢と後継者の状況

中小機構の事業承継ポータルは、中小企業白書(2025年版)のデータとして、経営者年齢の中心はやや若返りつつあるものの、60歳以上の経営者が依然として過半数を占めていると紹介しています。また、経営者が60歳代の企業のうち約半数で、後継者が決まっていないか、後継者候補の了承を得ていないとされています。

小規模な事業者についても、小規模企業白書(2025年版)をもとにした中小機構の資料によると、経営者が70代以上の層で、後継者候補の了承を得ていないか、承継したいが後継者は未定という回答が3割前後あります。「うちはまだ先」と感じている会社も、同じような状況にあることが少なくないということです。

承継に時間がかかる理由

親族や社内の人に継いでもらう場合は、後継者を決めて本人の了解を得たうえで、経営者として育てる時間が必要です。中小機構の事業承継ポータルでも、後継者が経営力を発揮できるまでには一定の時間がかかると考える経営者が多く、できる限り早い段階から計画的に取り組み、現経営者が後押しすることの大切さが強調されています。

株式の移し方や相続への備え、借入の個人保証の扱いも一度には片づかず、中小機構の資料も、承継の方法によっては準備に時間を要するため早めの具体的な着手が求められるとしています。取引先との関係や技術・ノウハウのような目に見えにくい資産の引き継ぎにも、時間がかかります。

外部に引き継ぐ場合にも時間はかかります。中小M&Aガイドライン(第3版)は、希望に合う相手と出会うまでの目安を「数か月〜1年程度」としており、その後に交渉や買い手の調査、契約、引き継ぎの期間も加わります。買い手の調査では決算書や契約書などの資料が求められるため、日頃から整理しておくほど進めやすくなります。

期限のある制度もあります。自社株式を贈与・相続で引き継ぐ際の法人版事業承継税制の特例措置は、2027年(令和9年)9月30日が特例承継計画の提出期限とされています(中小企業庁)。

先送りすると何が起きるか

中小M&Aガイドラインは、M&Aの判断は日々の忙しさで後回しになりがちだが、決断が遅れるほど選択肢は狭まる傾向にあると指摘しています。業績が良くない場合には資金繰りが尽きて身動きが取れなくなることもあり、判断が遅れた結果、廃業の費用すら捻出できない状況に陥るケースもあるとしています。

反対に、早く検討して実現できれば、経営者の手元に残る譲渡対価が多くなるケースもあるとされています。中小機構の資料には、準備をしないまま創業者の判断能力が低下し、事業の継続すら危ぶまれる状況に陥った例も紹介されており、体調の急な変化に備える意味でも、余力のあるうちに動くことに意味があります。

後継者が決まらないまま経営者に万一のことがあれば、株式は相続人に分かれて引き継がれ、会社の意思決定が難しくなることもあります。遺言や生前の贈与によって株式を後継者に集めておく準備も、早めに取りかかりたい対策の一つです。

余力のあるうちに動く

  • 候補者を探し、育てる時間がある
  • 業績や資金の余力を交渉に生かせる
  • 株式・保証の整理を段階的に進められる
  • 経営者自身が判断し、関係者に説明できる

追い込まれてから動く

  • 選べる相手や方法が限られやすい
  • 資金繰りが先に尽きるおそれがある
  • 引き継ぎが駆け足になりやすい
  • 廃業の費用も用意しにくくなることがある

廃業が地域に与える影響

会社が廃業すると、そこで働く人の職場がなくなり、仕入先や外注先は取引を失います。地域の人が頼りにしていた店やサービスがなくなれば、暮らしにも影響が出ます。影響は経営者と従業員にとどまらず、取引のつながりを通じて周囲に広がっていきます。地域によっては同じ業種の担い手が少なく、廃業した店や工場の代わりがすぐには見つからないこともあります。

設備は買い直せても、長年かけて培った技術や地域での信用、取引先との関係は、一度途切れると同じ形で取り戻すのは難しいものです。中小M&Aガイドラインも、早期の検討によって従業員の雇用を確保し、地域のサプライチェーンを維持することが可能になると述べています。

後継者のいない事業と、創業を目指す人を結びつける仕組みとして、事業承継・引継ぎ支援センターの「後継者人材バンク」もあります。地域の事業を次の担い手につなぐ道は、親族や社員への承継だけではありません。

後継者候補とどう話し合うか

中小機構の事業承継ポータルは、事業承継の第一歩は後継者との対話だとしています。後継者候補がいても、本人の了承を得ていなかったり、引き継ぎの意思をまだ伝えられていなかったりするケースは少なくありません。

中小機構の資料には、会長が実権を持ち続けて社長への経営権の委譲が進まず、トラブルに発展した例も紹介されています。後継者の側から経営権の委譲を言い出すのは難しく、言い出すことでかえってこじれる場合もあるとされるため、いつ、どう渡すかは現経営者の側から切り出し、会社の強みや思いも含めて話し合っておくことが大切です。

話し合いでは、後継者に何を引き継いでほしいのかを具体的に伝えることも欠かせません。中小機構の資料は、製品へのこだわりなど自社の魅力が後継者に伝わらず、取引先との良い関係を築けていない例を挙げ、現経営者の側から事業について積極的に対話し、自社の強みを一緒に考える機会を増やす必要があるとしています。

今日からできる準備

準備の多くは、誰に引き継ぐかが決まっていなくても進められます。たとえば会社と経営者個人のお金の区分けは、経営者保証に関するガイドラインが保証を求めない要件の一つに挙げているもので、将来の保証の解除や、外部に引き継ぐ際の磨き上げのためにも意味があります。

中小機構の資料は、「引き継いでもらえる」会社になるための磨き上げとして、本業の強みを見える化して磨くこと、業務の改善や無駄な経費の削減など経営体制を総点検すること、貸借対照表のスリム化やオーナーと会社の線引きを明確にすることを挙げています。現時点で会社を売却した場合の価格の目安を試算し、企業価値を高めるための指標にすることも有効だとしています。

大がかりな準備から始める必要はありません。中小機構の資料が最初の段階として示す「現状の把握」を中心に、次のようなことから手をつけられます。

  • 会社の強み、資金繰り、今後の見通しを書き出す
  • 株主と持株数、親族関係を整理する
  • 経営者個人の財産(自社株・個人名義の土地や建物)と、借入の個人保証を把握する
  • 会社と経営者個人のお金の出入りを分けて記録する
  • 後継者候補がいれば、将来について話し合ってみる
  • 公的な「事業承継診断」のチェックシートで課題を洗い出す

最初の相談先

国が全国47都道府県に設けている事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継に関する相談や事業承継計画の策定、M&Aのマッチングなどの支援を原則無料で受けられます。課題を洗い出す簡単なチェックシート「事業承継診断」は、商工会や金融機関なども実施しています(中小企業庁)。各センターの連絡先は、中小機構の事業承継・引継ぎポータルで確認できます。

中小M&Aガイドラインは、顧問の税理士などの士業、所属する商工団体、取引金融機関といった身近な支援機関への相談も挙げており、日本政策金融公庫も相談を受け付けているとしています。「まだ何も決めていない」段階で話してみることで、次にやるべきことが見えてきます。

よくある質問

Q. 何歳くらいから準備を始めればよいですか。

A. 一律の決まりはありません。後継者の育成や株式・保証の整理に年単位の時間がかかることを考えると、業績や体力に余裕があり、自分で判断して周囲に説明できるうちに、現状の把握だけでも始めておくのが望ましいでしょう。

Q. 準備を始めたことが社内に知られると、動揺を招きませんか。

A. 現状の把握や公的窓口への相談の段階では、社内に広く知らせる必要はありません。後継者候補への打診や社内への説明の時期は、方針が固まってから計画的に決めるのが一般的です。

Q. 準備を始めても、途中で方針を変えることはできますか。

A. できます。親族内での承継を考えていたものの、状況が変わって第三者への引き継ぎに切り替えることもあり得ます。早めに準備を始めておけば、方針を変える場合にも時間の余裕を持って対応しやすくなります。

参考にした公的な情報

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します()。

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