企業のM&A相談窓口専門家と公的窓口へ、おつなぎします

急いでいるとき

会社を今すぐ売りたいときに、現実的にできること

資金繰りや廃業の期限に追われて「とにかく早く売りたい」と考えるのは、無理もないことです。ただ、M&Aには相手探しから契約・決済まで一定の時間がかかり、焦りが条件の悪化につながることもあります。いま動かせることと、急いでも省いてはいけないことを分けて考えましょう。

先に結論

会社の売却は、相手探しから成約まで数か月〜1年程度かかるのが一般的で、今日明日に現金化できるものではありません。ただ、資金の残り時間の把握、書類や希望条件の整理、公的窓口への相談といった売り手側の準備はすぐに始められ、準備が整っているほど話は進めやすくなります。急ぐときほど、経営者保証や契約条件の確認は省かないことが大切です。

この記事のポイント

期間の目安は「数か月〜1年程度」中小M&Aガイドラインは、希望する相手とのマッチングに数か月〜1年程度かかると見込んでいます。個別の事情で前後します。
最初の1週間は売り手側の準備に使う資金の残り時間の把握、決算書などの書類集め、公的窓口への相談の申込みは、相手が決まる前から進められます。
廃業の期限があるなら並行で進める売却の検討と廃業の準備を同時に進めておくと、どちらに転んでも慌てずに済みます。
急いでも保証と契約は確認する経営者保証の扱いや支払い条件を詰めずに契約すると、売却後に大きな負担が残るおそれがあります。

M&Aにかかる期間の目安

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、個別のケースで異なるとしたうえで、希望する買い手(譲り受け側)とのマッチングには通常、数か月〜1年程度の時間がかかると見込んでいます。中小企業基盤整備機構の解説(J-Net21)でも、中小企業のM&Aは実行までに半年から1年程度を要するケースが多いとされています。

時間がかかるのは、踏むべき手順が多いからです。一般的には、支援機関への相談と準備、相手探し、トップ面談と条件の交渉、基本合意、買い手による調査(デューデリジェンス)、最終契約、決済と引き渡し(クロージング)という順に進みます。なかでも読みにくいのが「相手が見つかるまで」の期間で、ここは売り手の努力だけでは縮めにくい部分です。

それでも、準備を後回しにしてよいわけではありません。ガイドラインは、決断が遅れるほどM&Aの選択肢は狭まる傾向にあり、業績が良くない場合には資金繰りが尽きて身動きが取れなくなるケースもあると注意を促しています。時間がかかるからこそ、今日から動ける部分を前倒しすることに意味があります。

急ぐときに、最初の1週間でやること

相手が見つかる前でも、売り手の側で進められる準備はあります。ガイドラインによると、最初の相談で求められる資料は多くなく、直近3年分の決算書と税務申告書、勘定科目の内訳明細書の写しがあれば始められ、それ以上の資料は依頼先から指示があってからでよいとされています。まずは資金の残り時間をつかみ、手元の資料と条件を整理するところから始めましょう。

相談先は一つに限りません。国が設置する公的相談窓口の事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県にあり、第三者への引継ぎを含む相談を無料で受け付けています。資金繰りそのものが苦しい場合は、中小企業活性化協議会への相談も並行して検討できます。

仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を検討するなら、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」のサイトで、登録の有無や手数料の考え方を調べられます。当窓口でも、ご状況をうかがったうえで、こうした公的窓口や専門家への相談の道筋をご案内しています。

  1. 1資金繰り表で「いつ・いくら足りなくなるか」を確かめる
  2. 2直近3年分の決算書・税務申告書・勘定科目内訳明細書をそろえる
  3. 3借入・経営者保証・リース・担保と、税金や社会保険料の未納の有無を書き出す
  4. 4従業員の雇用、保証の扱い、時期など、譲れない条件に優先順位をつける
  5. 5事業承継・引継ぎ支援センターや顧問税理士に相談を申し込む

相手が見つかるまでの時間を左右するもの

同じように売却を検討しても、話の進み方には差が出ます。ガイドラインは、買い手が評価するのは収支や規模だけでなく、技術力、取引先との関係や商流、従業員、地域や業界での信用、業歴、店舗網、ノウハウ、許認可など多くの要素に及ぶとしています。小規模であったり、赤字や債務超過であったりしても、事業の価値を認めて譲り受けを申し出る買い手が現れることはありうる、という立場です。

反対に、検討に時間がかかりやすいのは、社長がいないと仕事が回らない、数字や契約書が整理されていない、株式が親族などに分散している、事業に使う土地や設備が社長個人や第三者の名義になっている、会社と個人の財産が混ざっている、といった状態です。ガイドラインも、M&Aの実行には最低限、株式や事業用資産の整理・集約が必要だとしています。

急いでいるときに全部を整えるのは難しいものです。それでも、社長しか知らない業務を書き出す、主要な取引先と契約の一覧を作るといった作業は数日でも進められ、買い手が事業を理解する手がかりになります。

買い手の側の事情も知っておきましょう。ガイドラインによると、中小M&Aの買い手には、売り手の数倍程度の規模の、必ずしも大きくない会社が相当の割合を占め、買い手にとってもM&Aは一大決心であることが多いとされています。急いでいるときでも、買い手からの質問や資料の依頼には誠実に応じることが求められます。

廃業の期限が迫っているときの進め方

店舗の賃貸借契約の満了や、資金が尽きる見込みの時期などから、廃業日がほぼ決まっている場合もあるでしょう。その場合は、期限から逆算して「この日までに相手の見通しが立たなければ予定どおり廃業する」という判断の日を先に決め、売却の検討と廃業の準備を並行して進めるのが現実的です。

廃業にも、設備や在庫の処分、原状回復、従業員や取引先への対応などの費用と手間がかかります。ガイドラインは、判断が遅れた結果、廃業費用すら捻出できない状況に陥るケースもあると指摘しています。一方で、事業全体の継続が難しくても、利益の出ている店舗など一部の事業だけを早めに譲り渡すことで、事業の一部を残せるケースがあることにも触れています。

相手探しの方法の一つに、インターネット上で相手を探すM&Aプラットフォームがあります。ガイドラインは、譲り渡し側が無料で登録できるものが相当数あり、当事者が自ら相手を探せる場合もあることから、近い将来に廃業を考えている小規模な事業者も活用を検討することが望まれるとしています。一方で、社名を伏せた情報でも会社が特定されるリスクがあり、一度ネット上に出た情報を完全に消すのは難しいため、どこまで載せるかは慎重に決める必要があります。

「会社を丸ごと売るか、たたむか」の二択で考えず、一部の事業の譲渡も含めて比べてみる価値があります。廃業と売却で手元に残るお金をどう比べるかは、関連記事で詳しく扱っています。

急ぐほど、保証と契約の確認は省かない

急いでいると、「細かい条件は後で詰めればいい」と考えがちです。しかしガイドラインは、買い手による調査が十分に行われないと、最終契約で売り手が負う表明保証(会社の状態について事実だと約束する条項)や補償の負担が重くなりうると注意しています。資金繰りの事情で基本合意を省き、最終契約に直接進むケースもあるとされていますが、その場合でも契約内容の確認まで省いてよいわけではありません。

特に確認したいのが、経営者個人の連帯保証(経営者保証)の扱いです。会社を売っても、保証は自動では外れません。ガイドラインは、保証の解除や買い手への引継ぎを買い手の義務として最終契約に明記し、クロージングの条件にすることや、実行されなかった場合の契約解除・補償の条項を盛り込むことを検討すべきとしています。事前に弁護士や事業承継・引継ぎ支援センター、保証先の金融機関に相談することも、選択肢として示されています。

仲介会社やFAとの契約にも確認が必要です。手数料(最低手数料を含む)、他社への依頼を禁じる専任条項の範囲と期間、秘密保持の約束があっても弁護士や公的窓口に意見を求められるかを、契約前に確かめておきましょう。ガイドラインは、専任条項を設ける場合の契約期間について、最長でも6か月〜1年以内を目安としています。

契約の内容に不安が残るときは、調印の前に、ほかの支援機関や弁護士などに意見を求める(セカンド・オピニオン)ことも有効だと、ガイドラインは述べています。急いでいるときほど、第三者の目を一度通してから署名することを心がけましょう。

よくある質問

Q. 従業員や取引先に知られずに、急いで進めることはできますか?

A. ガイドラインは秘密保持の徹底を重視しており、ごく一部の関係者を除いて、従業員や取引先に知らせるのは原則としてクロージング後(早くとも最終契約後)とするよう求めています。急ぐあまり複数の支援機関に同時に声をかけると、情報が必要以上に広がるおそれもあるため、依頼先の数は慎重に決めましょう。

Q. 赤字や債務超過でも、急ぎの売却を相談してよいですか?

A. 相談してかまいません。負債が大きい場合は、会社ごと引き継ぐ株式譲渡ではなく事業譲渡を組み合わせる、再生の手続きと並行させるなど、進め方が変わることがあります。どの方法が取れるかは負債と保証の状況で大きく異なるため、借入の一覧と保証の内容は最初の相談で伝えておきましょう。

Q. 売却がまとまるまでの資金繰りは、どうすればよいですか?

A. 売却の検討と並行して、借入先への返済条件の相談、税金・社会保険料の猶予制度、中小企業活性化協議会への相談などを検討できます。何をどの順番で確認するかは、資金繰りが限界のときの確認事項をまとめた記事で整理しています。

参考にした公的な情報

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します()。

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