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税金・社会保険料の滞納

差押えの通知が来た…会社の売却は間に合う?

督促状や差押えに関する書類が届くと、「いっそ会社を売れば何とかなるのでは」と考える方もいるでしょう。売却の可能性を探る前に、まず今どの段階にいて、何ができるのかを確かめることが大切です。

先に結論

差押えの手続きが進んでいても、会社や事業の売却を検討する余地が残っている場合はあります。ただし、間に合うかどうかは滞納の額や差し押さえられた財産、事業の状況によって大きく異なり、一概には言えません。まずは書類の差出人である税務署などに連絡して納付の相談をし、換価の猶予などが使えるかを確かめることが先決です。

この記事のポイント

今どの段階かを確かめる督促状の送付、財産の調査、差押え、取立て・公売と手続きは進みます。届いた書類で今の段階が分かります。
差押えの後でも相談できる換価の猶予が認められれば公売などの換価が猶予され、事業に欠かせない財産の差押えが解除されることもあります。
売却だけに望みをかけない売却には相手探しから契約まで段階があり、時間がかかります。猶予の相談と並行して検討するのが現実的です。
財産を隠す・移すのは犯罪差押えを免れる目的で財産を隠したり移したりすると、滞納処分免脱罪に問われることがあります。

届いた書類で、今どの段階かを確かめる

国税庁は、納期限を過ぎても納付や相談がない場合、電話や文書による納付の催告のほか、督促状の送付、財産の調査、差押え、取立てや公売、滞納している国税への充当という順で手続きが進むことを示しています。法律上は、督促状を発した日から10日を経過した日までに完納しないと、財産を差し押さえなければならないと定められています(国税徴収法47条)。一方で国税の通達は、督促状を発してから6か月以上たって差し押さえる場合には、あらかじめ催告をする取扱いとしています。

差押えは、財産の種類によって知らされ方が違います。預金や売掛金などの債権は、銀行や取引先に「債権差押通知書」が届いた時点で効力が生じ、会社には差押調書の謄本が渡されます。不動産の場合は、会社に差押書が届き、差押えの登記がされます。

手元にあるのが督促状や催告の文書なのか、すでに差押えが行われたことを示す書類なのかで、取れる手段と急ぐべき度合いは変わります。差出人が税務署・国税局なのか、市区町村などの自治体なのか、年金事務所なのかも確かめましょう。社会保険料の場合の流れと猶予の制度は、別の記事で詳しく説明しています。

  1. 1納期限を過ぎる(延滞税がかかり始める)
  2. 2督促状の送付、電話や文書による催告
  3. 3預金・売掛金・不動産などの財産の調査
  4. 4財産の差押え(銀行や取引先に通知が届くことも)
  5. 5取立て・公売で現金に換え、滞納している国税にあてる

差し押さえられると、事業に何が起きるか

売掛金が差し押さえられると、取引先は代金を会社ではなく徴収職員に支払うことになり、取り立てられた金額は滞納している国税にあてられます。通知は取引先に届くため、滞納していることを取引先に知られることにもなります。預金が差し押さえられた場合も会社はその預金を引き出せなくなり、仕入れや給与の支払いに影響が出かねません。

差押えには、その財産を勝手に処分することを禁じる効力があり、差押えの後に財産を譲り渡しても、国に対抗することはできません。差し押さえられた不動産や設備を含めて事業を譲り渡そうとしても、差押えを解かない限り思うようには進められないということです。

こうした財産は、差押えの後、入札や競り売りの方法による公売にかけられ、その売却代金が滞納している税金の支払いに回されます。国税庁はインターネットを使った公売も行っており、事業に使っている財産が売られてしまえば、事業を続けることも、事業として譲り渡すことも難しくなります。

税金を納め終えるまでは、「未納の税額がないこと」の証明にあたる納税証明書(その3)が発行されない点も見逃せません。金融機関からの借入れや入札への参加などで納税証明書が必要になる場面では、これも事業の足かせになりえます。

差押えの後でも取れる手続き

差押えを受けた後でも、「換価の猶予」を受けられる場合があります。申請による換価の猶予には納期限から6か月以内という期限がありますが、国税庁は、すでに滞納がある場合や滞納から6か月を超えた場合でも、税務署長が職権で換価を猶予する場合があると案内しています。

換価の猶予が認められると、原則1年以内の猶予期間の中で分割して納める形になり、差し押さえた財産の公売などの換価が猶予され、延滞税も軽減されます。さらに、差押えによって事業の継続や生活の維持が難しくなるおそれのある財産については、差押えを猶予したり解除したりできる定めもあります(国税徴収法152条)。

国税の通達では、差し押さえる財産を選ぶ際は事業の継続への支障が少ない財産であることなどに留意し、滞納者から差し押さえる財産について申出があれば、執行に支障がない限りその財産を差し押さえる取扱いが定められています。取引先との関係に響く売掛金の差押えを避けたいといった事情があれば、相談の場で伝えてみましょう。

そして、差押えの対象になっている国税を全額納めれば、差押えは解除されると法律で定められています(国税徴収法79条)。売却代金などで納める見通しが立つ場合も、その計画を税務署と共有しながら進めることになります。

売却は「間に合う」のか:考えておきたい3つのこと

一つ目は時間です。会社や事業の売却は、相手探し、条件の話し合い、買収前の調査(デュー・ディリジェンス)、契約、代金の支払いと引渡しと段階を踏むため、数日で終わるものではありません。差押えや公売の手続きが進む中で、売却の成立だけを当てにして待つのは危険です。

二つ目は、何が差し押さえられているかです。事業に欠かせない預金や売掛金、不動産が差し押さえられていると、事業譲渡でもその財産を差押えがついたまま自由に移すことはできず、株式譲渡なら差押えと滞納を抱えた会社として評価されます。売却代金で滞納を納めて差押えを解く段取りが組めるかは、税務署や専門家を交えて詰める必要があります。

三つ目は、滞納以外の負担です。金融機関からの借入れや買掛金、未払いの給与など、ほかの債務の状況によっては、売却より先に法的な整理を検討すべき場面もあり、その判断には弁護士の関与が欠かせません。見通しは状況によって大きく異なるため、「売れば間に合う」と決めつけず、猶予の相談と並行して専門家に確かめていくことが大切です。

やってはいけないこと:財産を隠す・移す

追い詰められると、差押えの前に預金を引き出しておこう、売上の入金先を別の会社に変えようと考えてしまうかもしれません。しかし、滞納処分を免れる目的で財産を隠したり、国に不利益な処分をしたりすると、滞納処分免脱罪として3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金(併科もあり)の対象になります(国税徴収法187条)。事情を知って相手方になった人も処罰されえます。

国税庁は、滞納している法人の代表者が、預金を引き出して自宅に保管したり、自らが実質的に経営する新しい法人に工事代金を支払うよう取引先に頼んだりした事案を、滞納処分免脱罪で告発した事例として公表しています。令和7年度には9件の事案を告発したとしています。

親族や知人に財産を譲る場合でも、ただ同然の値段であれば、受け取った側が第二次納税義務を負わされることがあります(同法39条)。売却を考えるなら、財産を動かす前に、税務署への相談と専門家による確認を済ませることが前提です。

今日からできること

まず、書類に書かれた担当部署に電話で連絡し、納付が難しい事情を伝えて相談しましょう。国税なら所轄の税務署の徴収担当が窓口です。すでに差押えを受けている場合は、差押調書の謄本や差押書など、届いた書類をすべて手元にそろえてから連絡すると、状況を正確に伝えられます。

あわせて、滞納の一覧、預金残高や入金の予定、借入れの状況をまとめ、顧問税理士がいれば共有します。複数の債権者への対応や法的な整理が視野に入るなら、弁護士に相談しましょう。中小企業向けには日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」があり、初回の相談30分は無料と案内されています。

事業の引継ぎ先を探すかどうかの検討も、こうした相談と並行して始められます。当窓口でも切迫した状況のご相談をお受けしており、何から手を付けるべきかを一緒に整理したうえで、状況に合った相談先をお伝えしています。

よくある質問

Q. 会社の滞納で、社長個人の財産まで差し押さえられますか?

A. 差押えの対象は、原則として滞納している会社の財産です。ただし、滞納がある中で会社の財産を無償や著しく低い価額で個人に移した場合や、解散の際に税金を納めないまま残った財産の分配を受けた場合、偽りその他不正の行為で会社が税を免れたときの一定の役員などは、第二次納税義務として納付を求められることがあります(国税徴収法34条・39条・40条)。

Q. 住民税や固定資産税など、地方税の滞納でも相談できますか?

A. できます。地方税の猶予の相談窓口は、都道府県や市区町村の担当窓口です(国税庁の猶予制度FAQ)。書類に書かれた担当課に早めに連絡し、使える猶予や分割での納付について確かめてください。

Q. 延滞税は、いつまでかかり続けますか?

A. 延滞税は、原則として法定納期限の翌日から納める日までの日数に応じて自動的にかかります。猶予が認められると猶予期間中の延滞税は軽減または免除され、その効果は許可された日ではなく申請した日から及ぶため、早めに申請するほど負担を抑えられます。

参考にした公的な情報

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します()。

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