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税金・社会保険料の滞納

滞納がある会社を、買い手や専門家はどう確認する?書類・契約・価格への影響

滞納がある会社の売却では、買い手やその依頼を受けた専門家が、滞納の中身を細かく確かめます。何をどう確認されるのかを知っておくと、売り手は準備を整えやすくなり、買い手は判断を誤りにくくなります。

先に結論

買い手や専門家は、納税証明書や申告書・帳簿などで滞納の額と経緯を確かめ、その結果を譲渡価格や、表明保証などの契約条件に反映させていきます。事業譲渡では滞納は売り手に残るのが原則ですが、譲り受ける相手や対価によっては買い手が第二次納税義務を負うことがあるため、条件の組み立てには税理士や弁護士の確認が欠かせません。

この記事のポイント

書類で裏づけを取る納税証明書(その1〜その4)や申告書、帳簿で、滞納の額や経緯、滞納処分の有無が確かめられます。
結果は価格と契約へ判明した滞納は価格や支払いの条件に織り込まれ、残るリスクは表明保証などで手当てされます。
事業譲渡でも油断しない特殊な関係にある相手への譲渡や、著しく低い対価での譲渡では、買い手に納税義務が及ぶことがあります。
消費税・源泉の滞納は丁寧に受け取った税や差し引いた税を納めていない状態です。事業譲渡そのものにかかる消費税も見込んでおきます。

なぜ滞納は細かく確認されるのか

株式譲渡では会社の法人格がそのまま引き継がれるため、帳簿に表れない債務や将来発生しうる債務のリスクも買い手が抱えることになり、より詳しい調査が行われる傾向があると、中小M&Aガイドラインは説明しています。滞納している税金や延滞税、過去の申告に誤りがあった場合の追加の納税も、こうしたリスクに当たりえます。

事業譲渡は、どの財産を引き継ぐかを選べるため帳簿外の債務のリスクを遮断しやすい方法とされますが、それでも確認は欠かせません。譲り受けたい財産が差し押さえられていないか、譲渡の相手や対価が後から問題にならないかは、事業譲渡ならではの確認点です。

調査(デュー・ディリジェンス)の結果は、取引を進めるかどうかの判断と、譲渡価格や条件、表明保証の内容の調整に使われます。滞納の確認は売り手を責めるためではなく、双方が納得できる条件を探すための作業と考えるとよいでしょう。

確認に使われる主な書類

国税の状況は、主に納税証明書で確かめます。納税証明書には、納付すべき税額・納付した税額・未納の税額などを示す「その1」、所得金額の「その2」、未納の税額がないことを示す「その3」、一定の期間に滞納処分を受けたことがないことを示す「その4」があります。滞納があれば「その3」は受けられず、「その1」に未納の額が表れます。

納税証明書を請求できるのは納税者本人(法人は代表者)で、委任を受けた代理人が委任状を添えて請求することもできます。買い手が自由に取得できるものではないため、売り手が取り寄せて示すのが基本になります。e-Taxを使ってオンラインで請求することもでき、電子ファイルの納税証明書で受け取る方法もあります。

このほか、直近数期分の申告書・決算書・勘定科目内訳明細書、督促状や差押えに関する書類、猶予の許可の通知や分割納付の記録、地方税や社会保険料の納付状況を示す書類なども確認の対象になります。滞納の全体像が一度に分かるよう、税目ごとに整理しておくと話が早く進みます。

  • 納税証明書(その1で未納の額、その4で滞納処分の有無)
  • 直近数期分の申告書・決算書・勘定科目内訳明細書
  • 督促状、差押えの通知や差押調書の謄本などの書類
  • 猶予の許可の通知と、分割納付の計画・実績
  • 地方税の納税証明書と、社会保険料の納付状況を示す書類
  • 消費税・源泉所得税の申告額と納付額の対応

確認の結果は、価格と契約条件に反映される

判明した滞納は、譲渡価格から差し引く、クロージング(代金の支払いと引渡し)までに納付を済ませることを条件にする、代金の一部を納付にあてる段取りを組む、といった形で扱いが話し合われます。どの形が合うかは、滞納の額や猶予の状況、売り方によって変わります。

調べきれないリスクや、後から見つかるかもしれない問題に備えるのが「表明保証」です。中小M&Aガイドラインは、契約の一方が一定の時点の事実について真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証する条項と説明し、違反したときの損害賠償や解除といった補償の定めも設けられるのが通常だとしています。

売り手にとっては、期間や責任の上限が決まっていない表明保証や、どんな場面に適用されるのか判然としない表明保証は、負担が大きくなりえます。中小企業庁がガイドラインの参考資料として示す説明書のサンプルも、こうした点をリスクとして挙げています。滞納を正直に開示して価格に織り込み、そのうえで保証の範囲を専門家と詰めることが大切です。

滞納の扱いを、代金の一部をクロージングの後に支払う形や、後から譲渡額を調整する条項で手当てすることもあります。ただ、同じ説明書のサンプルは、支払いの時期をクロージングと分けることや、譲渡額を調整・修正する条項について、解釈の違いなどから当事者間の争いに発展するリスクがあるとしています。こうした条件を置く場合は、発動する条件や金額の決め方を具体的に書き込んでおく必要があります。

事業譲渡で問題になる「第二次納税義務」

事業譲渡では、売り手の滞納は売り手に残るのが原則です。ただし国税徴収法は、本来の納税者から滞納処分で徴収しきれない場合に、一定の関係にある第三者に代わって納めさせる「第二次納税義務」を定めています。事業を譲り受ける側が知っておきたいのは、主に次の二つです。

一つは、特殊な関係にある者への事業譲渡です(38条)。滞納している会社を支配する株主や、その株主と生計を一にする親族、滞納している会社が支配する会社、同じ株主が支配する別の会社などが事業を譲り受け、同じか似た事業を営んでいる場合には、譲り受けた財産の価額を限度に納税義務を負うことがあります。特殊な関係に当たるかは事業を譲渡した時点の状況で判断され、滞納している国税の法定納期限より1年以上前の譲渡は対象になりません。

もう一つは、無償や著しく低い対価での譲渡です(39条)。法定納期限の1年前の日以後に行われた無償や著しく低い額での譲渡などが原因で徴収しきれない場合、譲り受けた側は、受けた利益が現に残っている限度で納税義務を負う場合があります。38条と違い、特殊な関係にない第三者でも対象になりうる点に注意が必要です。

このほか、会社分割で事業を引き継いだ場合も38条の事業譲渡と同じように扱われ、分割の形によっては分割をした会社の国税を連帯して納める責任を負います(国税通則法9条の3)。中小M&Aガイドラインは、債務超過の会社が事業を譲り渡す場合、少なくとも破産したと仮定した場合の価値を相当程度超える対価が求められるとしています。対価が妥当かどうかは、税理士や弁護士と確かめておくことが欠かせません。

消費税・源泉所得税の滞納と、譲渡にかかる税金

滞納の中身が消費税や源泉所得税の場合は、確認の際に重く見られることがあります。消費税は、商品やサービスの価格に上乗せされて最終的に消費者が負担し、事業者が納める税です。源泉所得税は、従業員の給与などを支払う際に差し引いた所得税を、会社が国に納めるものです。

これらの滞納は、受け取ったお金や差し引いたお金がほかの支払いに回ったことを意味するため、買い手は滞納額だけでなく、資金繰りや経理の管理がどうなっていたかにも目を向けることがあります。売り手は、滞納に至った経緯と今後の納付の計画を説明できるようにしておきましょう。

事業譲渡そのものに消費税がかかる点にも注意が必要です。国税庁の質疑応答事例では、事業の譲渡は資産をまとめて譲り渡すものなので、営業権や建物・設備などの課税される資産と、土地などの課税されない資産の対価を合理的に区分し、課税される部分に消費税がかかるとされています。受け取った消費税を納める資金を確保しないまま代金を使ってしまえば、新たな滞納を生みかねません。

売り手・買い手、それぞれの準備

売り手は、国税・地方税・社会保険料ごとに滞納額と延滞税(延滞金)、猶予や分割納付の状況を一覧にし、納税証明書などの裏づけの資料をそろえておきます。相談の早い段階で伝えておけば、調査の範囲や条件の組み立てに最初から織り込んでもらえます。

買い手は、税務の確認を税理士に、契約や第二次納税義務などの法的な論点を弁護士に依頼し、調べる範囲を事前に決めておきます。仲介会社やフィナンシャル・アドバイザー(FA)を選ぶ際は、国の「M&A支援機関登録制度」のデータベースで、登録の有無や手数料の基準などを確かめられます。

また、滞納処分を免れさせる目的で財産を隠したり国に不利益な処分をしたりする行為に、事情を知りながら相手方として関わった人も処罰の対象です(国税徴収法187条3項)。「滞納を切り離して安く買える」といった話を持ちかけられたら、買い手の側も慎重に対応するべきです。

よくある質問

Q. 猶予を受けて分割で納めている途中でも、売却の話は進められますか?

A. 猶予を受けていることを前提に話し合うことになります。許可の通知や、計画どおりに納めてきた記録を示し、残りをいつ、どの資金で納めるのかを示せるよう準備しておきましょう。残りを納める時期は、価格や支払いの条件とあわせて決めていくことになります。

Q. まだ表に出ていない税金(過去の申告の誤りなど)も調べられますか?

A. 株式譲渡では、過去の申告の内容も調査の対象になると考えておきましょう。申告に不安があれば、売却の話を進める前に顧問税理士と内容を点検し、必要な対応を済ませておくことが、後から条件が大きく変わる事態を防ぐことにつながります。

Q. 個人事業主から事業を譲り受ける場合も、同じ点に注意が必要ですか?

A. 個人事業の引継ぎは、事業譲渡の形をとるのが通常です(中小M&Aガイドライン)。滞納は原則として元の事業主に残りますが、生計を一にする親族などが事業を譲り受けて同じか似た事業を続ける場合は38条の、著しく低い対価で譲り受けた場合は39条の第二次納税義務が問題になりえます。身内での引継ぎほど、条件を専門家と確かめておきましょう。

参考にした公的な情報

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況についての税務・法務・会計の判断ではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家や公的な窓口にご確認ください。 当窓口は、ご相談の内容に応じて専門家や公的な相談窓口をご案内・ご紹介します()。

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